継続は力なり

指導部だより(2022年3月号)小林義昭 先生

いまから四十数年前。手を引かれながら「剣道いきたくない!」と泣きわめく私に、ときどき父は道場手前の曲がり角にある自販機で缶コーヒーを買って、その最初のひと口をくれました。甘くてあったかくて、自然と涙が止まる味でした。

冬でも裸足で、夏でも重い防具を着けて、竹刀で人に叩かれ、怖い先生に毎回同じことを怒鳴られる……こんなつらいことを毎日くりかえし喜んでやる人がこの世にいるものか! そう思いながらいやいや道場に通っていた私でしたが「継続は力なり。五段を取るまでやめないこと」という父のいいつけもあり、気づけば大学まで剣道を続けて四段を取得していました。

その後、社会人になってからは竹刀を握ることがなくなってしまいましたが、五年前に縁あってこの福住剣友会に入会しました。

腕に多少の覚えがあったつもりでしたが、毎日のようにずっと変わらず剣道と向き合い続けてきた先生方にはまったく歯が立ちません。二十数年の空白期間はいくら悔やんでも取り戻せないのだと「継続は力」の意味を痛感したものです。

さて、卒業のシーズンです。新天地へと一歩踏み出すみなさんは、どうかこの先も剣道を続けてください。たとえ途中で休んだとしても、いつか再開する意思を持ち続けて欲しいです。

そして剣道にかぎらず、自分が身につけた得意ななにかをこの先も継続してください。それはきっと、生きていくための力になるということを忘れずに。

学生時代に剣道で苦楽をともにした仲間の活躍を伝え聞くたびに、いまも「継続は力」を実践している彼らを誇りに思い、その存在は自分をふるい立たせてもくれます。

そして、手を引っ張ってでも道場に連れて行ってくれた両親と、同じことを何度もくりかえしご指導いただいた先生方の気持ちが少しだけわかる立場になって、こうしてみなさんに自分の経験を伝えられるいまがあることをとても嬉しく思います。

三年前、五段に合格しました。かつてのいいつけを守ったこと、次は六段を目指すことをいまは亡き父に報告しました。練習後の帰り道、自販機の前でジュースをねだる息子の姿についつい財布のひもがゆるむのは父のせいにしています。

缶コーヒーに釣られ、泣きながら通っていた道場はもう無くなってしまいましたが、当時教わった怖い先生方とお会いすることがあります。いまでもあのころと変わらず練習嫌いの私を笑いながら、毎回同じ昔話まじりに優しいご指導をしてくださいます。

何十年後かのいつか、みなさんと稽古をしながら同じ昔話を何回もしてしまう……。そんな日が来ることを楽しみに、私も剣道を継続していきます。

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